令和元年度 第14回 応用動物科学専攻セミナー

数理モデルでせまる生物の時間の謎

黒澤 元 博士

理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS),専任研究員

講演要旨
   20世紀後半からの分子遺伝学・分子生物学の驚異的な進展によって、生物リズムの仕組みは、遺伝子やタンパク質の言葉で解かれつつあります。2017年には体内時計の遺伝子についての研究にノーベル生理学・医学賞が与えられました。皆さんの中には、今さら生物リズムに対して数学や数理モデルを使うメリットなどあるのか、と思う方もいるかもしれません。今回の講義では、(遺伝子やタンパク質の)ミクロの情報を高校レベルあるいは大学1,2年生レベルの数学を用いて統合すれば、古くからの身近な謎にせまれることを示します。具体的には、「なぜ、私たちの体内時計の周期は24時間ちょうどでないのか」、「どうして、暑くても寒くても体内時計の進み方はほとんど変わらないのか」、「冬眠とは何か」といった問いに対する数理的なアプローチを紹介する予定です。