令和4年度 第5回 応用動物科学専攻セミナー

新規CRF受容体isoformの探究と先天性複合型下垂体ホルモン分泌不全症における病因解明への試み

宮田 市郎 博士(東京慈恵会医科大学 小児科学講座 教授)

今回は「新規CRF受容体isoformの単離とその生理学的意義」と「先天性複合型下垂体ホルモン分泌不全症における病因解明」という2つの研究についてお話しをさせていただきます。 以下にそれぞれの概略を述べます。

1. CRF (Corticotropin Releasing Factor) は41個のペプチドからなる視床下部ホルモンであり、神経・内分泌・免疫系のKey Hormoneと考えられています。CRFの受容体はラット・ヒトにおいてCRF1, CRF2α CRF2β, CRF2γの4つのisoformに分類されていますが、 CRFの作用の多様性を考えると更に複数のisoformが存在し、それぞれがCRFの特異的な機能を分担している可能性が推測されます。そこで我々は脳のAmygdalaに注目し、新規CRF受容体の単離を行いましたのでその特徴と生理学的な意義についてお話しします。

2. 遺伝的に低身長を呈する疾患には主に成長ホルモン(GH)単独欠損症とGHを含む下垂体前葉ホルモンの複合分泌不全症が挙げられます。今回我々は遺伝的な先天性複合型下垂体ホルモン分泌不全症の中でもGH, TSH, PRLが特異的に欠損する患者において新しいPOU1F1遺伝子異常を同定するとともに同定された変異に対して多面的な機能解析を行いましたので、その結果を紹介いたします。 更に最近、先天的にGHとTSHの複合分泌不全を認める興味深い1家系を経験しましたが、その病因解明の試みについてもお話ししたいと思います。