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Loss of non-canonical translation initiation factors impairs perinatal cardiac function in mice Asai T, Tochinai R, Tsuru Y, Sekiguchi M, Minami A, Fujii W, Kyuwa S, Ogawa T, Kakuta S. in press 近年の研究により、真核生物のmRNAには古典的なAUG開始コドンだけでなく、その上流や下流に非古典的な開始コドンも存在することが分かっています。 このような非古典的な開始コドンは半数近くがnon-AUGであり、一部はストレス応答や、神経変性疾患、がんなどの病態に関与することが示されています。 Non-AUGコドンからの翻訳開始はeIF2AとeIF2Dによって制御されていますが、これらが標的とする開始コドンやその詳細な制御機構はほとんど未解明でした。 Eif2aおよびEif2d遺伝子を個別(KO)または両方(DKO)で欠失させたマウスを作製したところ、DKOマウスでのみ周産期に心臓の駆出率が顕著に減少することがわかり、eIF2A/Dが母体心臓のストレス応答を調節していることがわかりました。非古典的な翻訳現象が周産期の心機能維持において重要であることを初めて見出した研究になります。実験動物学研究室の浅井健宏さんの研究成果です。衛生学研究室の栃内先生をはじめとする農学生命科学研究科内の多くの研究室との共同研究。 Urinary lipid production in dogs with urothelial carcinoma Hayashi A, Maeda S, Yamazaki A, Nakamura T, Goto-Koshino Y, Yonezawa T, Kobayashi K, Murata T. Vet J 11:106373, 2025. 犬の膀胱がん(正式には尿路上皮がん)は進行が早く、転移もしやすいため、早期に見つけて経過を追える新しい検査方法が求められています。放射線動物科学研究室では、犬の尿に含まれる脂質の種類や量を詳しく調べることで、がんの有無や特徴を明らかにできることを示しました。また、BRAF遺伝子の変異や一般的に使用される治療薬(NSAIDs)の服用が脂質の排泄パターンに影響することも発見しました。林亜佳音さんと山崎愛理紗さんの研究成果です。 An increase in the urinary levels of prostaglandin D2 and platelet-activating factor metabolites in dogs with mast cell tumor Yamazaki A, Hayashi A, Nakamura T, Hamasaki Y, Inoue R, Yoshimoto S, Kobayashi K, Nakagawa T, Murata T. J Vet Med Sci 87(4):407-410, 2025. 犬の肥満細胞腫は頻度も悪性度も高いですが、診断することが難しい癌の1つでもあります。このバイオマーカーを探索したところ、肥満細胞が産生する脂質の代謝物が尿に排泄されていることを発見しました。このバイオマーカーを応用すれば、侵襲性なく肥満細胞腫をみつけることができます。放射線動物科学研究室博士課程を卒業された山崎愛理紗さんの研究成果です。 Urinary Lipid Production Profile of Patients With Food Allergy Masuko S, Inagaki S, Hamabata T, Ishii T, Nagata N, Yamamoto-Hanada K, Fukuie T, Narita M, Shimosawa T, Ohya Y, Murata T. Clin Exp Allergy 55(3):256-259, 2025. 食物アレルギー患者の尿中に排泄される脂質代謝物のプロファイルを明らかにしました。バイオマーカーとなる物質を見つけており、検出キットの開発も進めています。完成すれば、家でも体内のアレルギー反応を客観的にとらえられ、免疫療法のモニタリングも可能になります。放射線動物科学研究室博士課程を卒業された益子櫻さんの研究成果です。国立成育医療研究センターとの共同研究。 A high prevalence of dogs seropositive to Leishmania in Zambia Chambaro HM, Hayashida K, Moonga LC, Shawa M, Muleya W, Chizimu J, Squarre D, Sugi T, Yamagishi J, Ogata S, Kajihara M, Sawa H, Sanjoba C, Mwase ET, Chilengi R, Munsaka GH, Sarenje KL, Mulunda NR, Mutengo MM, Namangala B, Goto Y. IntParasitol Int 108:103081, 2025. 寄生虫性疾患であるリーシュマニア症は世界広くに蔓延する人獣共通感染症ですが、南部アフリカ諸国ではリーシュマニア症の報告がほとんどありませんでした。そこで、未報告国の一つであるザンビア共和国において、イヌにおけるリーシュマニア原虫感染状況の調査を行いました。その結果、ザンビアにおいてリーシュマニア感染が高率であり、感染がイヌの健康状態に悪影響を与えていることが示唆されました。東京大学、北海道大学およびザンビア研究・行政機関の合同チームによる成果です。 Insulin receptor substrate-2 regulates the secretion of growth factos in response to amino acid deprivation Takahashi A, Furuta H, Nishi H, Takahashi SI, Hakuno F. Int J Mol Sci 1. 26(2):841, 2025. インスリン受容体基質(IRS)はインスリンやインスリン様成長因子(IGF)のシグナル伝達を仲介する分子として知られています。これまで動物細胞制御学研究室では、食事中に含まれるタンパク質量が不足した低タンパク食をラットに給餌すると、肝臓においてIRS-2のタンパク量が著増することを報告してきましたが、IRS-2タンパク量増加の生理的意義については分かっていませんでした。今回私たちは、増加したIRS-2が肝臓からのVEGF-Dの分泌を促進する新たな機能を有していることを発見しました。この結果は、IRS-2が動物の栄養状態をモニターしてその情報を血液を通して全身に伝達する組織間情報伝達システムの鍵タンパク質であることを示しています。動物細胞制御学研究室・博士課程3年の髙橋彩夏さんらによる研究成果です。 Detection of Leishmania donovani DNA from Oral Swab in Visceral Leishmaniasis Sarkar SR, Hobo R, Shoshi Y, Paul SK, Goto Y, Noiri E, Matsumoto Y, Sanjoba C. Pathogens 14(2):144, 2025. 内臓型リーシュマニア症は、原生動物(寄生虫)の感染が原因となり、治療しなければ致死率の高い感染症です。医療へのアクセスが不十分なため、診断を受けることすら困難な発展途上地域で流行する傾向があります。本研究では、採血やバイオプシーといった医療設備や技術を必要とする診断用試料を代替するものとして、非侵襲的に採取できる口腔スワブを用いた診断法の可能性を新たに示しました。応用免疫学研究室に所属していた応動修士課程修了生・保浦里名さん、JSPS論博プログラム生のSantana Sarkarさん(Mymensingh Medical College)らの研究成果です。 Transient receptor potential vanilloid 4 gene-deficiency attenuates the inhibitory effect of 5,6-dihydroxy-8Z,11Z,14Z,17Z-eicosatetraenoic acid on vascular permeability in mice Inoue K, Takenouchi S, Kida M, Kashio M, Tominaga M, Murata T. J Pharmacol Sci 157(1):35-38, 2025. エイコサペンタ塩酸(EPA)の代謝物である5,6-DiHETEと呼ばれる脂質が、TRPV4チャネルの抑制を介して炎症を抑制することを証明しました。この脂質は、痒みを含むアレルギー性炎症を抑制することも分かっており、実用化にむけた応用研究を進めています。放射線動物科学研究室・井上琴葉さんの研究成果です。 Increasing rat numbers in cities are linked to climate warming, urbanization, and human population Richardson JL, McCoy EP, Parlavecchio N, Szykowny R, Beech-Brown E, Buijs JA, Buckley J, Corrigan RM, Costa F, DeLaney R, Denny R, Helms L, Lee W, Murray MH, Riegel C, Souza FN, Ulrich J, Why A, Kiyokawa Y. Sci Adv 11(5):eads6782, 2025. 気候変動や都市化がネズミに与える影響を調べるために、東京を含む世界16都市のデータを分析しました。その結果、平均気温が上昇するほど、また人口密度が高いほど、苦情数の増加率が大きいことが確認されました。また緑被率が高いほど、また緑被率の減少が小さいほど、苦情数の増加率が抑えられたり、苦情数が減少したりすることも確認されました。獣医動物行動学研究室・清川准教授も参加した国際共同研究の成果。 Versatile application of fast green FCF as a visible cholangiogram in adult mice to medium-sized mammals Niimi T, Miyazaki N, Oiki H, Uemura M, Zeng S, Promsut W, Ota N, Nonaka S, Takei H, Nittono H, Narushima S, Yanagida A, Hiramatsu R, Kanai-Azuma M, Takami S, Fujishiro J, Kanai Y. Sci Rep 15:1960, 2025. 食品添加物(ファストグリーンFCF;通称「緑色3号」)を用いることで、目視による簡便な胆道造影を開発しました。安全で安価に、術時・術後のイヌ、ヤギの肝外胆管が目視で可視化でき、さらには、胆汁鬱滞マウスの胆管の閉塞部位、内壁構造、胆囊胆汁の病態の評価も可能です。獣医学、医学の基礎・臨床研究から動物解剖の教育実習まで、幅広い用途での利用が見込まれます。獣医解剖の新美さん、宮崎さん、小児外科の追木さんによる研究成果です。 (CLOSE) |
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