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Long-term scratching analysis of mice using machine learning Kobayashi K, Miyazaki Y, Sakamoto N, Yamamoto M, Nagata N, Murata T. PNAS Nexus pgaf292, 2025. マウスの“かゆみ”をAIで“見える化”する新技術を開発しました。マウスのひっかき行動を 24 時間ニューロネットワークで自動解析し、かゆみの「質」と「量」を定量化。従来見えなかった夜間や持続性のかゆみのリズムもすべて可視化でき、アトピーやアレルギー、薬剤開発への応用が期待されます。食と動物のシステム科学の小林先生の研究成果です。 Immune profile focusing on B-cell activating factor in B cell malignancies Tagami N, Yamagishi J, Fujii W, Sanjoba C, Goto Y. Front Hematol 4:1626886, 2025. B-cell activating factor(BAFF)はB細胞の発育や成熟に重要なサイトカインです。B細胞から派生したがん細胞の増悪にも関与すると考えられ、BAFFやその受容体を標的とした治療法が開発されてきましたが、安定した成果は得られていません。私たちはB細胞性腫瘍におけるBAFFの役割が状況によって異なるという仮説を立て、異なる分化段階のB細胞系がん細胞を用いて解析を行ったところ、BAFFが腫瘍の抑制と増悪の両方に機能し得ることが明らかとなりました。腫瘍形成におけるBAFFの効果は、がん細胞のBAFF受容能だけでなく、がん微小環境の形成機序やがん免疫における液性免疫の役割など、様々な要素によって規定される複雑系であることが示唆され、今後BAFFを標的としたがん対策のあり方に有益な情報を提供する研究であると期待されます。応動博士課程修了生・田上さんらの研究成果です。 Automated analysis of mouse rearing using deep learning Sakamoto N, Fukuda M, Miyazaki Y, Omori K, Kobayashi K, Murata T. J Pharmacol Sci 159(1):21-24, 2025. ケージ内におけるマウスの自然な行動の1つに立ち上がり行動があります。これはマウスの探索意欲を示す指標として使われます。我々はケージ内のマウスの一般行動のすべてを、上から撮影した動画を機械学習を用いて検出するシステムの開発を進めています。本研究ではマウスの立ち上がり行動について精度高く検出できる機械学習を確立したので報告しました。放射線動物科学研究室、大学院生・坂本直観さんと研究員・福田将大さんの論文です。 Skin-Derived PGD2 Promotes Antigen-Specific IgE Production via CRTH2 Signaling Kida M, Nakamura T, Maeda S, Nagata N, Enomoto H, Murata T. Allergy 80(9):2674-2677, 2025. 食物アレルギーの発症(IgE抗体の産生)に、皮膚からの抗原侵入が大きなリスクになることが知られています。本研究ではマウスモデルを用いて、皮膚に食物の抗原が侵入するとPGD₂という生理活性脂質が作られ、これが抗原提示細胞の受容体CRTH2に作用することでIgE抗体がつくられることを発見しました。CRTH2を阻害する薬を皮膚に塗布すると、IgE抗体がつくられにくくなり、アレルギー症状も抑えられる可能性も示しました。この仕組みを利用すれば、皮膚を入り口としたアレルギーの予防・治療法の開発につながることが期待されます。 放射線動物科学研究室、博士課程を卒業した木田美聖さんの研究成果です。 Thyroid Carcinoma in a Japanese Black Cow Living in the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident Contamination Area Sasaki J, Sato I, Okada K, Deguchi Y, Natsuhori M, Murata T, Satoh H, Chida H, Ito N. Bull Environ Contam Toxicol 114(6):89, 2025. 福島第一原発事故で飛散した放射性物質に長期間さらされた地域で暮らしていた 11歳の黒毛和種の去勢牛の甲状腺を調べたところ、癌性のしこり(甲状腺癌)が見つかりましたので報告しました。当該の牛の外部被ばく量は、放射性セシウムによるものが444 mSv、131I、132Te、132Iといった短寿命核種によるものが15 mSvと推定された。内部被ばく量は 放射性セシウムによるものが18 mGy、短寿命核種によるものが1 mGyと推定された。なお低線量の放射線被ばくと甲状腺癌発症との直接的な因果関係は確認されていません。放射線動物科学として被災地にて13年継続してきた研究の成果です。 Urinary Prostaglandin Metabolites as Potential Biomarkers for Differentiating IgE-Mediated Food Allergy and Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome Umezawa K, Nagata N, Kabashima S, Inuzuka Y, Ogasawara H, Shimada M, Hamaguchi S, Natsume O, Fukuie T, Shimosawa T, Ohya Y, Murata T, Yamamoto-Hanada K. Allergy 80(10):2890-2893, 2025. 食べ物によって起こるアレルギーには、すぐに症状が出るタイプ(IgE型)と、遅れて下痢や嘔吐などの胃腸症状が出るタイプ(FPIES)があります。どちらか見た目だけでは区別が難しいことがあります。そこで我々は、おしっこに含まれる特定の炎症性脂質(PGD2)代謝物の濃度を調べることで、どちらのタイプのアレルギーかを見分けられる可能性を見い出しました。IgE型ではそのPGD2代謝物が多く出る一方、FPIESでは出にくい、という違いを確認したのです。将来的に、もっと簡単に、確実に診断できる方法につながるかもしれません。放射線動物科学研究室、永田奈々恵先生の研究成果で、国立成育医療研究センターとの共同研究成果です。 SRSF9-Mediated Exon Recognition Promotes Exon 2 Inclusion in Mecp2 Pre-mRNA Alternative Splicing Oshizuki S, Masaki S, Tanaka S, Kataoka N. Int J Mol Sci 26(7):3319, 2025. レット症候群原因遺伝子でもあるエピジェネティクス制御因子MeCP2は、エクソン2の包含/排除による選択的スプライシングにより、二つのアイソフォームを産生します。しかしその機構は明らかになっていませんでした。私たちの研究から、エクソン2の包含には、エクソン2の両端の“強い”スプライス部位と、エクソン2内部に存在するExonic Splicing Enhancer(ESE)が必要であることを明らかになりました。さらに、そのESEには、スプライシング因子SRSF9が結合してエクソン2の包含を促進する事を見出しました。細胞生化学研究室の博士課程の学生である押月紗矢さんによる研究成果です。 Genomic analysis of co-infection with Wolbachia and Candidatus Tisiphia in the sand fly Sergentomyia squamirostris Itokawa K, Kuroki A, Kobayashi D, Kuroda M, Sawabe K, Isawa H, Sanjoba C. Front Microbiol 16:1577636, 2025. 多くの節足動物で細胞内共生細菌が報告されていますが、日本産サシチョウバエ Sergentomyia squamirostris の共生細菌研究は皆無でした。本研究では、同種に共生するWolbachia属およびCandidatus Tisiphia属の完全ゲノムを明らかにしました。特に、サシチョウバエ共生C. Tisiphiは世界初の報告となります。Tisiphia 属は雌のみに共生し、Wolbachia 属は雄雌両方に存在することが確認されました。両細菌は宿主の生殖操作に関与するとされており、本成果は、病原体媒介昆虫における共生率や病原体との相互作用解明を促し、感染症制御の新戦略につながる可能性を秘めています。これは東大応用免疫学研究室と国立感染症研究所の共同成果です。 Apolipoprotein b transcription is driven by ornithine in hepatoma cell lines Nishi H, Nakanishi S, Yamanaka D, Takahashi SI, Hakuno F. Biochem Biophys Res Commun 775:152076, 2025. 肝臓からの超低密度リポタンパク(VLDL)の分泌は肝臓の脂肪量や血中の脂質量の調節に重要な役割を果たしていることが知られています。私たちは最近、肝臓細胞に含まれるオルニチン量にしたがって、VLDLの構成成分であるApoBの発現量が制御されていることを明らかにしました。このようにオルニチンにはApoBのmRNA量を制御することによってVLDLの分泌を制御している可能性があることがわかりました。これは動物細胞学研究室の修士課程修了生である中西瀬名さんと元特任研究員の西宏起さんの研究成果です。 Vertical transmission of Leishmania donovani with placental degeneration in the pregnant mouse model of visceral leishmaniasis Mizobuchi H, Yamagishi J, Sanjoba C, Goto Y. PLoS Negl Trop Dis 19(6):e0012650, 2025. 内臓型リーシュマニア症(VL)では、妊娠中に胎児への垂直感染が報告されていますが、そのメカニズムはこれまで明らかにされていませんでした。本研究では、VL妊娠マウスモデルの確立により、胎児の約7割から寄生虫DNAが検出され、さらに胎児の肝臓で寄生虫特異的タンパク質の発現が確認されました。また、胎盤には炎症や組織の異常が認められ、バリア機能の低下が感染に関与している可能性が示唆されました。これらの成果は、VLの垂直感染メカニズムの解明に貢献するものです。東大応用免疫学研究室と北海道大学の研究チームによる研究成果です。 Loss of non-canonical translation initiation factors impairs perinatal cardiac function in mice Asai T, Tochinai R, Tsuru Y, Sekiguchi M, Minami A, Fujii W, Kyuwa S, Ogawa T, Kakuta S. in press 近年の研究により、真核生物のmRNAには古典的なAUG開始コドンだけでなく、その上流や下流に非古典的な開始コドンも存在することが分かっています。 このような非古典的な開始コドンは半数近くがnon-AUGであり、一部はストレス応答や、神経変性疾患、がんなどの病態に関与することが示されています。 Non-AUGコドンからの翻訳開始はeIF2AとeIF2Dによって制御されていますが、これらが標的とする開始コドンやその詳細な制御機構はほとんど未解明でした。 Eif2aおよびEif2d遺伝子を個別(KO)または両方(DKO)で欠失させたマウスを作製したところ、DKOマウスでのみ周産期に心臓の駆出率が顕著に減少することがわかり、eIF2A/Dが母体心臓のストレス応答を調節していることがわかりました。非古典的な翻訳現象が周産期の心機能維持において重要であることを初めて見出した研究になります。実験動物学研究室の浅井健宏さんの研究成果です。衛生学研究室の栃内先生をはじめとする農学生命科学研究科内の多くの研究室との共同研究。 Urinary lipid production in dogs with urothelial carcinoma Hayashi A, Maeda S, Yamazaki A, Nakamura T, Goto-Koshino Y, Yonezawa T, Kobayashi K, Murata T. Vet J 11:106373, 2025. 犬の膀胱がん(正式には尿路上皮がん)は進行が早く、転移もしやすいため、早期に見つけて経過を追える新しい検査方法が求められています。放射線動物科学研究室では、犬の尿に含まれる脂質の種類や量を詳しく調べることで、がんの有無や特徴を明らかにできることを示しました。また、BRAF遺伝子の変異や一般的に使用される治療薬(NSAIDs)の服用が脂質の排泄パターンに影響することも発見しました。林亜佳音さんと山崎愛理紗さんの研究成果です。 An increase in the urinary levels of prostaglandin D2 and platelet-activating factor metabolites in dogs with mast cell tumor Yamazaki A, Hayashi A, Nakamura T, Hamasaki Y, Inoue R, Yoshimoto S, Kobayashi K, Nakagawa T, Murata T. J Vet Med Sci 87(4):407-410, 2025. 犬の肥満細胞腫は頻度も悪性度も高いですが、診断することが難しい癌の1つでもあります。このバイオマーカーを探索したところ、肥満細胞が産生する脂質の代謝物が尿に排泄されていることを発見しました。このバイオマーカーを応用すれば、侵襲性なく肥満細胞腫をみつけることができます。放射線動物科学研究室博士課程を卒業された山崎愛理紗さんの研究成果です。 Urinary Lipid Production Profile of Patients With Food Allergy Masuko S, Inagaki S, Hamabata T, Ishii T, Nagata N, Yamamoto-Hanada K, Fukuie T, Narita M, Shimosawa T, Ohya Y, Murata T. Clin Exp Allergy 55(3):256-259, 2025. 食物アレルギー患者の尿中に排泄される脂質代謝物のプロファイルを明らかにしました。バイオマーカーとなる物質を見つけており、検出キットの開発も進めています。完成すれば、家でも体内のアレルギー反応を客観的にとらえられ、免疫療法のモニタリングも可能になります。放射線動物科学研究室博士課程を卒業された益子櫻さんの研究成果です。国立成育医療研究センターとの共同研究。 A high prevalence of dogs seropositive to Leishmania in Zambia Chambaro HM, Hayashida K, Moonga LC, Shawa M, Muleya W, Chizimu J, Squarre D, Sugi T, Yamagishi J, Ogata S, Kajihara M, Sawa H, Sanjoba C, Mwase ET, Chilengi R, Munsaka GH, Sarenje KL, Mulunda NR, Mutengo MM, Namangala B, Goto Y. IntParasitol Int 108:103081, 2025. 寄生虫性疾患であるリーシュマニア症は世界広くに蔓延する人獣共通感染症ですが、南部アフリカ諸国ではリーシュマニア症の報告がほとんどありませんでした。そこで、未報告国の一つであるザンビア共和国において、イヌにおけるリーシュマニア原虫感染状況の調査を行いました。その結果、ザンビアにおいてリーシュマニア感染が高率であり、感染がイヌの健康状態に悪影響を与えていることが示唆されました。東京大学、北海道大学およびザンビア研究・行政機関の合同チームによる成果です。 Insulin receptor substrate-2 regulates the secretion of growth factos in response to amino acid deprivation Takahashi A, Furuta H, Nishi H, Takahashi SI, Hakuno F. Int J Mol Sci 1. 26(2):841, 2025. インスリン受容体基質(IRS)はインスリンやインスリン様成長因子(IGF)のシグナル伝達を仲介する分子として知られています。これまで動物細胞制御学研究室では、食事中に含まれるタンパク質量が不足した低タンパク食をラットに給餌すると、肝臓においてIRS-2のタンパク量が著増することを報告してきましたが、IRS-2タンパク量増加の生理的意義については分かっていませんでした。今回私たちは、増加したIRS-2が肝臓からのVEGF-Dの分泌を促進する新たな機能を有していることを発見しました。この結果は、IRS-2が動物の栄養状態をモニターしてその情報を血液を通して全身に伝達する組織間情報伝達システムの鍵タンパク質であることを示しています。動物細胞制御学研究室・博士課程3年の髙橋彩夏さんらによる研究成果です。 Detection of Leishmania donovani DNA from Oral Swab in Visceral Leishmaniasis Sarkar SR, Hobo R, Shoshi Y, Paul SK, Goto Y, Noiri E, Matsumoto Y, Sanjoba C. Pathogens 14(2):144, 2025. 内臓型リーシュマニア症は、原生動物(寄生虫)の感染が原因となり、治療しなければ致死率の高い感染症です。医療へのアクセスが不十分なため、診断を受けることすら困難な発展途上地域で流行する傾向があります。本研究では、採血やバイオプシーといった医療設備や技術を必要とする診断用試料を代替するものとして、非侵襲的に採取できる口腔スワブを用いた診断法の可能性を新たに示しました。応用免疫学研究室に所属していた応動修士課程修了生・保浦里名さん、JSPS論博プログラム生のSantana Sarkarさん(Mymensingh Medical College)らの研究成果です。 Transient receptor potential vanilloid 4 gene-deficiency attenuates the inhibitory effect of 5,6-dihydroxy-8Z,11Z,14Z,17Z-eicosatetraenoic acid on vascular permeability in mice Inoue K, Takenouchi S, Kida M, Kashio M, Tominaga M, Murata T. J Pharmacol Sci 157(1):35-38, 2025. エイコサペンタ塩酸(EPA)の代謝物である5,6-DiHETEと呼ばれる脂質が、TRPV4チャネルの抑制を介して炎症を抑制することを証明しました。この脂質は、痒みを含むアレルギー性炎症を抑制することも分かっており、実用化にむけた応用研究を進めています。放射線動物科学研究室・井上琴葉さんの研究成果です。 Increasing rat numbers in cities are linked to climate warming, urbanization, and human population Richardson JL, McCoy EP, Parlavecchio N, Szykowny R, Beech-Brown E, Buijs JA, Buckley J, Corrigan RM, Costa F, DeLaney R, Denny R, Helms L, Lee W, Murray MH, Riegel C, Souza FN, Ulrich J, Why A, Kiyokawa Y. Sci Adv 11(5):eads6782, 2025. 気候変動や都市化がネズミに与える影響を調べるために、東京を含む世界16都市のデータを分析しました。その結果、平均気温が上昇するほど、また人口密度が高いほど、苦情数の増加率が大きいことが確認されました。また緑被率が高いほど、また緑被率の減少が小さいほど、苦情数の増加率が抑えられたり、苦情数が減少したりすることも確認されました。獣医動物行動学研究室・清川准教授も参加した国際共同研究の成果。 Versatile application of fast green FCF as a visible cholangiogram in adult mice to medium-sized mammals Niimi T, Miyazaki N, Oiki H, Uemura M, Zeng S, Promsut W, Ota N, Nonaka S, Takei H, Nittono H, Narushima S, Yanagida A, Hiramatsu R, Kanai-Azuma M, Takami S, Fujishiro J, Kanai Y. Sci Rep 15:1960, 2025. 食品添加物(ファストグリーンFCF;通称「緑色3号」)を用いることで、目視による簡便な胆道造影を開発しました。安全で安価に、術時・術後のイヌ、ヤギの肝外胆管が目視で可視化でき、さらには、胆汁鬱滞マウスの胆管の閉塞部位、内壁構造、胆囊胆汁の病態の評価も可能です。獣医学、医学の基礎・臨床研究から動物解剖の教育実習まで、幅広い用途での利用が見込まれます。獣医解剖の新美さん、宮崎さん、小児外科の追木さんによる研究成果です。 (CLOSE) |
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