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いま,動物を科学しましょう!

Dept_Head
応用動物科学専攻長
後藤 康之(ごとう やすゆき)

 私が生命科学の道に進むきっかけとなった問いは,「病気とは何か?」です。比較的小さい頃から感じていた疑問ですが,なぜそんなことを考えるようになったのかはわかりません。おそらく,最初は「病気になると嫌だなぁ。遊びに行けないし。」とか考えていたのでしょうが,次第に「どうして病気という状態になるのか?」「どうして病気の種類によっては対処が難しいのか?」という疑問に変わっていきました。腫瘍に良性・悪性があるのは知っていますが,「じゃあ,何がそれを規定しているのか?」ということに関しては,今でもまだピンと来ていません。数学が得意で,高校生物選択でもない私が生命科学分野に魅力を感じてしまったのは,実は上記に関連して「生命現象を数学的に説明したい!」と思ったのが理由かもしれません。

 ヒトが健康に過ごしていくためには,ヒトのからだのしくみがどのようになっており,細胞・組織がどのように協調しながら,病気という状態を回避しているのかを知る必要があります。当然ながら,ある疾患ひとつをとっても,その病気が他の病気に左右されることもあるため,研究対象とする疾患だけでなく周りも俯瞰的に捉える必要があります。加えて,ヒトの健康は,同じく自然を構成する他の動物たちの健康にも左右されます。食料問題や人獣共通感染症という観点だけでなく,伴侶動物から生態系サービスまで,様々なレベルやスケールで動物たちを見る必要もあります。そのため,動物生命システム科学専修や応用動物科学専攻では,哺乳類を主たる対象とし,動物が持つ複雑で多様な生命現象のメカニズムを分子レベルから個体レベルに至る視点から探求し,基礎生物学の発展,動物の多面的機能の開発,および,新たなバイオテクノロジーの構築に貢献していくための,専門的人材と世界的水準の研究者を養成することを教育・研究の目的としています。

  最初の話に戻ると,個人的な意見として,全ての生命現象は,そのスケールを問わず,数式で表すことができると思っています。ただし,その数式は複雑で,係数・変数が無数に存在しており,かつ異なる状況では係数が変わるというやっかいなものです。それを,論理的思考と実証実験を重ねることで,数式をより正確な近似式にしていくというのが研究なのではと思います。研究を成功させるためには,数学的・論理的思考に加えて,課題設定力,検証力,考察力も合わせて必要になってきます。そのため,本専修・専攻で学んだ学生の皆さんは,たとえ将来的に生命科学の分野から離れることになっても,同じ論理的手法を用いて課題を解決することができる優秀な人材として活躍することが期待できます。

  動物の面白さ・素晴らしさに惹かれ,動物について新しい何かを明らかにしたいと思っている皆さん,ぜひ一緒に「いま,動物を科学しましょう」!

C 2024 応用動物科学専攻広報 担当