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免疫病態:「諸刃の剣」である免疫応答

 風邪を引くと、熱やせき、くしゃみが出て、気分が下がります。「免疫、ちゃんと頑張っているのか」と残念に思いますが、これはある意味で免疫システムの頑張り所以でもあります。感染症において、免疫応答は病原体の排除(生体防御)に資すると同時に、宿主にとって不利益な症状(免疫病態)を引き起こしてしまいます。免疫応答はよく「諸刃の剣」に例えられますが、本来からだを守るべき免疫が不利益の原因だと聞くとすんなりとは納得しがたいです。
 私たちが研究しているリーシュマニア症は、リーシュマニア原虫の感染によって引き起こされる疾患です。その中でも特に重篤な疾患である内臓型リーシュマニア症は、発熱、貧血、肝脾腫などがみられ、しばしば致死的ですが、その症状にも宿主の免疫が関与しています。
 以下の写真は、原虫に感染した脾臓マクロファージが、なぜか自己の赤血球を過剰に貪食するようになることを示しています。血球貪食と呼ばれるこの現象は貧血の原因になると考えられると同時に、原虫の生存にとっても有益となることがわかってきました。血球貪食に関わる免疫機構を明らかにすることで、感染によってもたらされる症状を制御する新たな治療法が確立できると期待できます。

応用免疫学 後藤 康之

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C 2024 応用動物科学専攻広報 担当