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応用動物科学専攻関連の研究室が公表した研究成果などです。
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The IGF-Independent Role of IRS-2 in the Secretion of MMP-9 Enhances the Growth of Prostate Carcinoma Cell Line PC3.
Furuta H, Sheng Y, Takahashi A, Nagano R, Kataoka N, Perks CM, Barker R, Hakuno F, Takahashi SI. Int J Mol Sci 24(20):15065, 2023.
インスリンやIGF(insulin-like growth factor; IGF)のシグナルを仲介する分子として知られているインスリン受容体基質(insulin receptor substrate: IRS-2)が、前立腺がん細胞PC3でMMP9を分泌させる活性を持っていることを示した論文です。IRS-2はMMP9を分泌されることでIGFシグナルを異常に活性化し、前立腺がん細胞の悪性度をあげています。動物細胞制御学研究室博士課程修了生の古田遥佳さんらの成果です。

Moderate protein intake percentage in mice for maintaining metabolic health during approach to old age.
Kondo Y, Aoki H, Masuda M, Nishi H, Noda Y, Hakuno F, Takahashi SI, Chiba T, Ishigami A. Geroscience 45(4): 2707-2726, 2023.
若齢と中齢のマウスにタンパク質比率の異なる食餌を与えて、健康にどのような影響があるかを調べた論文です。高齢期に向けた健康的な食事のタンパク質比率は25-35%であると結論しました。東京都健康長寿医療センター研究所の石神昭人副所長、早稲田大学の近藤嘉高講師らとの共同研究です。動物細胞制御学研究室に所属しており現在東洋大学の増田正人准教授もSOM解析を行うことで研究に貢献しています。
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Enhancement of prostaglandin D2-D prostanoid 1 signaling reduces intestinal permeability by stimulating mucus secretion.
Hayashi A, Sakamoto N, Kobayashi K, Murata T. Front Immunol 14:1276852, 2023.
食物を消化吸収する腸管には、食物抗原や細菌毒素などが体内へ侵入することを防ぐバリア機能が備わっています。このバリアを強化することは、食物アレルギーや炎症性腸疾患をはじめとする様々な疾患の治療に繋がることが期待されています。放射線動物科学研究室の博士課程の学生林亜佳音さんらは、生体内でも産生される脂質のひとつであるプロスタグランジンD2のシグナルを薬を用いて刺激すると、腸管バリアが強化されることを発見しました。また、このメカニズムとして、粘液産生細胞である杯細胞からのムチン放出の促進が関与していることを明らかにしました。プロスタグランジンD2のシグナルの増強は、腸管バリア機能の低下に起因する様々な疾患の治療に応用できる可能性があります。

External genitalia phenotypes of a Mab21l1-null mouse model for cerebellar, ocular, craniofacial, and genital (COFG) syndrome.
Promsut W, Yamada R, Takami S, Miyazaki N, Uemura M, Hiramatsu R, Takahashi N, Kanai Y. The Anatomical Record 1-17, 2023.
ヌクレオチド代謝関連因子 MAB21L1 は、ヒトの小脳-眼-頭蓋顔面-外性器(COFG)症の原因遺伝子として知られており、COFG症の男児、女児は共に外陰部の低形成を呈します。Mab21l1欠損マウスも、小眼球、頭蓋骨形成不全とともに、 陰嚢、包皮腺などの外陰部の低形成を呈します。本研究は、Mab21l1欠損マウスの外陰部の形態形成の異常が上皮を裏打ちするMAB21L1+間葉系細胞の増殖異常とECM産生の低下に起因することを証明したもので、MAB21L1+間葉系細胞が末梢組織の形態形成でのヌクレオチド代謝/エネルギー供給に必須であることを強く示唆します。 本成果は、今年9月に卒業した獣医解剖学教室のPromsutさん(現在、タイMaha Sarakham大, 講師)の学位論文です。

Alleviation of allergic conjunctivitis by (±)5(6)-dihydroxy-8Z,11Z,14Z,17Z-eicosatetraenoic acid in mice.
Nagata N, Suzuki T, Takenouchi S, Kobayashi K, Murata T. Front Pharmacol 14:1217397, 2023.
放射線動物科学研究室では、ω-3脂肪酸EPAの代謝産物である5,6-DiHETEという脂質のもつ炎症抑制作用を発見してきました。今回、花粉抗原によっておこるアレルギー性結膜炎の症状をω-3脂肪酸EPAの代謝産物5,6-DiHETEの投与が抑えることを新たに発見しました。辛い痒みを抑える作用も分かりました。この脂質の代謝物(5,6-DiHETE)は青魚に多く含まれることが分かっています。近い将来花粉症などのアレルギー症状を食べることで、直す技術の開発につながる可能性があります。応用動物科学専攻卒業生鈴木十萌歌さんと永田奈々恵先生の研究成果です。

Roles of Lipocalin-type and Hematopoietic Prostaglandin D Synthases in Mouse Retinal Angiogenesis.
Horikami D, Sekihachi E, Omori K, Kobayashi Y, Kobayashi K, Nagata N, Kurata K, Uemura A, Murata T. J Lipid Res 64(10): 100439, 2023
これまで放射線動物科学研究室では、リポカリン型のPGD2合成酵素(L-PGDS)もしくは、造血器型のPGD2合成酵素(H-PGDS)から産生されるプロスタグランジンD2が肺炎や腸炎、癌やリウマチなどの病態において起こる、血管透過性の上昇やそれに続く血管新生を抑制する分子として機能することを報告してきました。
  しかし、L-PGDSとH-PGDSの2つの酵素がどのような役割分担を担っているのか、その生理的な意義は分かっていません。本研究では、生理的、病理的両方の血管新生機構の解明研究に用いられるマウスの網膜を用いて、両酵素の機能を比較しました。その結果、L-PGDSは発達段階の網膜の血管内皮細胞に発現しており、血管の発達を正常に整える働きを持つことを発見しました。H-PGDSにはこのような働きは確認されませんでした。一方で、H-PGDSは網膜症などの病態において網膜に浸潤する単球が発現しており、病的な血管新生の促進を抑えることを明らかにしました。
  上皮系の組織においてL-PGDSから恒常的に産生されるPGD2は血管ホメオスタシスの維持に、病態において組織に浸潤してくる免疫細胞が発現するH-PGDSから産生されるPGD2は極度な炎症やそれに伴う異常な血管新生を抑える働きを持つと考えられます。放射線動物科学研究室の卒業生堀上大貴さんと堰八英里香さんの研究成果報告です。

Behavioral changes of food allergic model mice during light and dark period.
Miyazaki Y, Kobayashi K, Murata T. J Pharmacol Sci 153 (3):113-118, 2023.
食物アレルギーや花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の患者数は増え続けており、その発症機構の解明や治療法の開発が求められています。これらのアレルギー症状には、抗原刺激の数時間後や数日後に起こる(遅発性のアレルギー反応)ものがあります。また発症にリズムがあり、夕方や明け方に発症するものもあります。 マウスなどのモデルを用いて、これらのアレルギー性疾患の病態解明研究が行われています。これらの研究においては、ヒトの都合のいい昼間に、抗原刺激数十分間のマウスの症状を観察して評価することが多いのが現状です。これでは、遅発性の反応や発症リズムを研究することはできません。また、マウスは夜行性であるため、昼間の実験が適しているとは言えません。
  放射線動物科学研究室の宮崎優介さんらは、昼夜にわたってマウスを撮影し、これを画像解析することで、食物アレルギーモデルマウスのケージ内における行動を評価しました。その結果、抗原刺激の後夜間でのみ、自発運動量が低下したり、ケージの隅で過ごす時間がふえるなどの変化が観察されました。症状に起因した痛みや苦痛が運動量を減らし、症状の持続がマウスの鬱様行動を惹起していると考えられま。 人患者においてアレルギー症状と鬱との関係は示唆されており、今後詳細な検証を続けていく予定で。また、今後引っ掻き行動や痛みの表現など、画像をもちいたより詳細な解析を行っていく予定です。

Production profile of lipid mediators in conjunctival lavage fluid in allergic and infectious conjunctivitis in guinea pigs.
Hayashi A, Kobayashi K, Nakamura T, Nagata N, Murata T. Front Allergy 4:1218447
アレルギー性結膜炎と感染性結膜炎の診断は容易ではなく、誤診により抗生物質やステロイド性抗炎症薬の不適切な使用や感染の拡大を招くリスクがあります。このため簡便かつ信頼できる診断技術の開発が求められてきました。
放射線動物科学研究室において、ヒトの結膜炎に近い症状を呈すると言われているモルモットを用いて、2つの結膜炎モデルを作製し、結膜洗浄液中に排泄される炎症性の生理活性脂質の濃度を網羅的に測定しました。
その結果、アレルギー性結膜炎では好酸球の活性を示す、プロスタグランジンD2やロイコトリエン類などの代謝物の濃度が高く検出され、感染性結膜炎では好中球主体の炎症を反映するプロスタグランジE2や不飽和脂肪酸の直接酸化物などの濃度が上昇していました。
それぞれの病態に特徴な産生動態を示した脂質濃度を測定する技術を開発すれば、侵襲性がなく容易に採取できる結膜の洗浄液を用いて、2つの結膜炎の類症鑑別が可能になる可能性があります。放射線動物科学研究室、博士課程所属の林亜佳音さんの研究成果です。

Partial male-to-female reprogramming of mouse fetal testis by Sertoli cell ablation.
Imaimatsu K, Hiramatsu R, Tomita A, Itabashi H, Kanai Y. Development 150 (14): dev201660.
マウス胎子の精巣からジフテリア毒素によりセルトリ細胞を実験的に除去すると、精巣の表層上皮から顆粒層細胞を含む卵巣皮質が形成され、精巣間質から卵巣特有の内莢膜細胞が出現し、生き残った生殖細胞は減数分裂を開始しメス型に分化し、つまり、精巣から卵巣へ性転換することが分かりました。この精巣から卵巣への性転換は、セルトリ細胞から分泌されるパラクライン因子の供給停止によるものです。本成果は、今年3月に卒業した獣医解剖学教室の今井松健也さんの学位論文です。

Parallel Olfactory Systems Synergistically Activate the Posteroventral Part of the Medial Amygdala Upon Alarm Pheromone Detection in Rats.
Kobayashi-Sakashita M, Kiyokawa Y, Takeuchi Y. Neuroscience 521:123-133, 2023
ストレスを受けたラットは、ヘキサナールと4-メチルペンタナールから成る警報フェロモンを放出します。これらの物質は、それぞれ主嗅覚系と鋤鼻系という異なる嗅覚系で受容されて効果を発揮することから、受容された情報は脳内のいずれかの部位で統合されると考えられます。そこで本研究では、これらの物質を嗅いだ後の脳活動を比較し、扁桃体という脳領域で情報が統合されることを明らかにしました。獣医博士課程・小林(坂下)さんらによる成果。

Glutamatergic Projections from the Posterior Complex of the Anterior Olfactory Nucleus to the Amygdala Complexes.
Lu MH, Uematsu A, Kiyokawa Y, Emoto K, Takeuchi Y. Neuroscience 521:102-109, 2023
仲間の存在はストレス反応を緩和することが知られています。この社会的緩衝という現象には前嗅核後部複合体と扁桃体という脳領域が関与することが明らかになっていました。そこで本研究ではこれらの脳領域がお互いにどのように接続しているか解析し、その接続パターンを明らかにしました。獣医博士課程修了生・呂さんらによる成果。

An appeasing pheromone ameliorates fear responses in the brown rat (Rattus norvegicus).
Kiyokawa Y, Tamogami S, Ootaki M, Kahl E, Mayer D, Fendt M, Nagaoka S, Tanikawa T, Takeuchi Y. iScience 26(7):107081, 2023
清川泰志准教授らによる研究グループは、実験用ラットと野生ドブネズミは2-メチル酪酸を放出していることを見出しました。そして2-メチル酪酸は実験用ラッと野生ドブネズミの両方で恐怖反応を緩和するフェロモンとして働くことを明らかにしました。
リンク:https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20230621-1.html
リンク:https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/press/z0508_00294.html

Mast cell-derived prostaglandin D2 limits the subcutaneous absorption of honey bee venom in mice.
Fujiwara Y, Nakamura T, Maehara T, Hayashi A, Aritake K, Murata T. Proc Natl Acad Sci USA. 120(22):e2300284120, 2023.
皮膚に侵入してきたハチ毒の吸収を抑える生体防御機構の発見。
放射線動物科学研究室では「アレルギー反応とは何か?」を知るべく、ハチ毒や蛇毒、寄生虫感染に対する生体防御反応の仕組みを調べようとしています。今回はアレルギー反応を起こすことで有名な皮膚のマスト細胞が、侵入してきたハチ毒を、皮膚で止めて解毒を行う働きを持つことを明らかにしました。アレルギー反応は有害な反応としてとらえられがちですが、本来は疫を免れるために必要な反応であったことが証明できました。応動修士課程修了生・藤原祐樹さんの研究成果です

Leishmania Infection-Induced Proteolytic Processing of SIRPα in Macrophages.
Hirai H, Hong J, Fujii W, Sanjoba C, Goto Y. Pathogens 12(4):593, 2023
リーシュマニア原虫に感染したマクロファージにおいて、抑制性受容体SIRPαの発現が変化することは知られていましたが、実際には細胞内外の両方で切断されることが今回明らかとなりました。細胞外で切断された際に生じる可溶性SIRPαは原虫感染マウス血清中でも上昇しており、炎症のバイオマーカーとしての利用も期待できます。獣医学専攻博士課程・平井さんらによる研究成果です。

Epidermal growth factor represses differentiation of mouse trophoblast stem cells into spongiotrophoblast cells via epidermal growth factor receptor.
Nishitani K, Hayakawa K, Tanaka S. BBRC 657:100-107, 2023
マウスで上皮成長因子受容体(Egfr)の機能を阻害すると、遺伝的背景によって程度の異なる異常が生じます。その一つに胎盤の特定の細胞種(SpT)の形成異常があることから、上皮成長因子(Egf)はSpTの分化や維持を正に制御すると長らく考えられていました。しかし今回、マウス栄養膜幹細胞を用いることで、Egfは予想に反してSpTの分化を抑制することが明らかになりました。Efgrに結合するリガンドの種類によって、SpT分化への効果が異なることが予想されます。応動博士課程修了生の西谷さん、応動出身の元特任助教・早川さんらによる研究成果です。

BAFF induces CXCR5 expression during B cell differentiation in bone marrow.
Koizumi H, Fujii W, Sanjoba C, Goto Y. Biochem Biophys Rep 34:101451, 2023
B細胞の分化において重要な役割を果たすサイトカインであるBAFFですが、B細胞の発生初期、つまり骨髄におけるB細胞発育への影響については議論が残ります。今回、骨髄での未成熟B細胞の発生において、BAFFがケモカイン受容体CXCR5の発現に重要であることを明らかにしました。応動修士課程修了生の小泉さんらによる研究成果です。

Marker-less tracking system for multiple mice using Mask R-CNN.
Sakamoto N, Kakeno H, Ozaki N, Miyazaki Y, Kobayashi K, Murata T. Front Behav Neurosci 16:1086242, 2023
現在、薬理や毒性試験に関する多くの実験では、個々のマウスやラットにおいて行動を観察するなどして、病状を評価します。しかし、動物にとってより自然な環境において見られる、社会性を含む彼らの多彩な表現を捉えるためには、複数個体で飼育し観察する必要があります。放射線動物科学研究室の坂本直観さん、食と動物のシステム学研究室の小林幸司先生らは、画像を用いることでケージ内にいる複数のマウスの体の特徴を捉えて個体を識別し、トラッキングできる人工知能の開発を行いました。この方法では、マウスにマーカーなどのラベルを付ける必要がなく、非侵襲かつ無拘束の状態で個体を識別することができます。今後、これまで行ってきた引っ掻き行動やグルーミング行動の識別プログラムとこの技術を掛け合わせることで、より高度な動物の行動解析システムの構築と応用を進めます。

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C 2024 応用動物科学専攻広報 担当