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応用動物科学専攻関連の研究室が公表した研究成果などです。
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 2024年  CLOSE

Inflammatory CD11b+ Macrophages Produce BAFF in Spleen of Mice Infected with Leishmania donovani.
Nagai K, Fujii W, Yamagishi J, Sanjoba C, Goto Y. Pathogens 13(3):232, 2014.
B細胞活性化因子であるBAFFは、内臓型リーシュマニア症における脾腫や高ガンマグロブリン血症の病態関連因子として機能します。感染個体では血中BAFF濃度の上昇も見られることから、脾臓においてBAFF産生が亢進していることが予想されましたが、BAFF産生細胞については分かっていませんでした。そこで感染マウスの脾細胞においてBAFF発現を解析したところ、主たる原虫感染細胞である脾臓の常在性マクロファージとは異なり、感染によって誘導される炎症性マクロファージが主たるBAFF産生細胞であることが明らかになりました。この炎症性マクロファージは、すでに明らかになっている別の病態関連因子であるMRP14も共発現しており、脾臓における病態形成に重要な役割を担っていることが示唆されました。獣医学専攻博士課程・長井さんらによる研究成果です。

Upregulation of ATP6V0D2 benefits intracellular survival of Leishmania donovani in erythrocytes-engulfing macrophages.
Hong J, Mukherjee B, Sanjoba C, Yamagishi J, Goto Y. Front Cell Infect Microbiol 14:1332381, 2014.
内臓型リーシュマニア症を引き起こすLeishmania donovaniの感染マウス脾臓ではマクロファージの多核化がみられます。これまでに私たちは、V-ATPaseの構成成分として知られるATP6V0D2の発現上昇がこの多核化に関与することを明らかにしました。本研究では、マクロファージ内での原虫生存に対するATP6V0D2の役割を調べたところ、①ATP6V0D2の発現上昇は感染マクロファージによる赤血球貪食に寄与する、②感染マクロファージによる赤血球貪食が細胞内原虫にもたらす利益もATP6V0D2依存的に制御される、③ATP6V0D2は赤血球貪食により増加する細胞内鉄の調節にも関与することが明らかとなりました。マクロファージの多核化や赤血球貪食は炎症性疾患との関与が報告されていますが、それらがATP6V0D2という分子で結びつくことを初めて明らかにした研究です。応動卒業生・洪さんが博士課程在学中に行った研究の成果です。

15-Hydroxyeicosatrienoic acid induces nasal congestion by changing vascular functions in mice.
Ozaki N, Sakamoto N, Horikami D, Tachibana Y, Nagata N, Kobayashi K, Arai YT, Sone M, Hirayama K, Murata T.. Allergol in press
アレルギー性鼻炎の症状を持つ患者と疾患モデルマウスの花粉症などアレルギー性鼻炎のつらい鼻づまり(鼻閉)は、薬物反応性が悪く、睡眠障害などをおこして患者のQOLを著しく下げます。 放射線動物科学研究室の尾崎乃理子さんと坂本直観さんらは、慢性化したアレルギー性鼻炎を患ったモデルマウスや患者さんの鼻汁から、脂質の代謝物である15-HETrEが多く検出されることを発見しました。この15-HETrEをマウスの鼻に投与すると、鼻腔が狭窄して鼻閉を引き起こしました。 このメカニズムとして、15-HETrEが鼻粘膜血管を弛緩させ、透過性を亢進していることがわかりました。15-HETrEは鼻閉を悪化させることが分かっている複数のプロスタグランジン受容体を介して、血管を弛緩させることもわかりました。15-HETrEはアレルギー性鼻炎における鼻閉を重症化させる原因物質である可能性があり、この産生阻害はつらい鼻づまりに対する新しい治療法になる可能性があります。

Identification and characterization of dystrophin-locus-derived testis-specific protein: a testis-specific gene within the intronic region of the rat dystrophin gene.
Yamanouchi K, Kato S, Tanaka Y, Ikeda M, Oshimo Y, Shiga T, Hamamoto K, Chambers J, Imamura T, Hiramatsu R, Uchida K, Matsuda F, Matsuwaki T, Kohsaka T. J Reprod Dev in press
獣医生理学教室ではジストロフィン遺伝子にin-frame変異をもち、エクソン3から16を欠損するベッカー型筋ジストロフィーモデルラット(BMDラット)の作製を2020年に報告しました。雄のBMDラットは不妊であることから、精子形成能に着目して解析を進めたところ、成熟個体における精巣が萎縮しており、精細管における精子形成が全くみられなくなっていることが判明しました。BMDラットで欠損しているジストロフィン遺伝子のエクソン3から16までの領域の遺伝子配列を調べたところ、エクソン6と7との間のイントロン領域にタンパク質翻訳領域をもつ遺伝子がジストロフィン遺伝子とは逆向きに存在することがわかりました。この新規遺伝子はラット精巣で特異的に発現しており、それによりコードされるタンパク質は円形精子細胞が成熟した精子になる精子完成期にだけ発現していました。この結果から研究グループはこのタンパク質をdystrophin-locus-derived testis-specific protein (DTSP)と名付けました。

Multiple ageing effects on testicular/epididymal germ cells lead to decreased male fertility in mice.
Endo T, Kobayashi K, Matsumura T, Emori C, Ozawa M, Kawamoto S, Okuzaki D, Shimada K, Miyata H, Shimada K, Kodani M, Ishikawa-Yamauchi Y, Motooka D, Hara E, Ikawa M. Commun Biol 7:16, 2024.
男性や雄の畜産動物の加齢が妊よう性や精子に影響することは従来の研究で示唆されていましたが、精液検査による集積的な症例報告に基づく知見が主であり、加齢・妊よう性・精子機能の生物学的な相関性や原因究明は困難でした。遺伝的・環境的に統制された雄マウスでは加齢で妊よう性が低下すること、この原因が、精子をつくる精巣と精子を貯蔵する精巣上体の老化による、精子の受精率や受精卵の発育の低下であることを発見しました。今後は、加齢男性や雄の畜産動物にみられる妊よう性低下の原因理解とともに、新たな治療技術や予防技術の確立につながることが期待されます。東京大学医科学研究所、大阪大学微生物病研究所との共同研究で、応用遺伝学研究室の遠藤墾助教の研究成果です。
こちらの解説もご参照ください。

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C 2024 応用動物科学専攻広報 担当